ヨウ素剤 Q & A


ヨウ素剤について一般的な知識をQ&A 方式でまとめてみました。

Q1)なぜヨウ素剤を飲むの?
A: 原子力施設に事故がおきた場合、いろいろな放射性物質が施設から放出されます。放射性ヨウ素もその中の一つです。放出された放射性ヨウ素は、呼吸や食物とともに体の中に取り込まれ、甲状腺に集まります。そのため甲状腺癌の原因になるおそれがあります。これに対し、前もってヨウ素剤をんでおけば、放射性ヨウ素が甲状腺に集まることを防ぎ、尿や便から排出されて、発癌の危険性(リスク)を低減することが出来ます。

Q2)どんな時にヨウ素剤をくばるの?
A: 事故の規模などから計算して、甲状腺の被ばく線量が100mSvをこえると予測されたときにくばられます。

Q3)100mSv の被ばくを受けるのは大気中にどのくらいの放射性ヨウ素がある場合?
A: 大気中の放射性ヨウ素が4,200Bq(べくレル)/m3 の場合24 時間その空気を吸入することによって小児甲状腺の被ばく線量が100mSvとなると予測されます。
注ー1:チェルノブイリ事故で甲状腺がんになったのは主に子供でしたから、子供には予測被ばく線量が低い場合でもヨウ素剤を与える方が望ましといえます。
注ー2:小児が甲状腺癌になりやすいことを考慮してベルギーでは、0 から19 歳までの若年者、妊婦、授乳婦は10mSv、オーストラリア(0 から16 歳、妊婦、授乳婦)、ドイツ(0 から45 歳)、アメリカ(0 から18 歳、妊婦、授乳婦)では50mSv をえると予測されたときにヨウ素剤を服用します。WHO も若年者に対しては、予測線量が10mSv を超える場合に服用することを推奨しています。
注ー3:各国のヨウ素剤を配布する予測線量、配布場所などに関しては最後にまとめてあります。

Q4)ヨウ素剤はどこでくばるの?
A: ヨウ素剤は各避難所などで配られます。
注ー1:配る場所は地方によって事情が異なりますから、一様ではない可能性があります。普段から保健所などに問い合わせておくと良いでしょう。
注ー2:平常時に、あらかじめ各家庭に配ることはしないと決められました。しかし、これはまだ検討の余地があるそうですから、自治体などで交渉してみるとよいでしょう。

Q5)ヨウ素剤はいつ飲むのが効果的?
A: ヨウ素剤は放射性ヨウ素が体に取り込まれる以前、または直後にむのが効果的です。この時期にのめば甲状腺にたまる放射性ヨウ素の90%以上を抑えますが、放射性ヨウ素が摂取された後4 時間以内では抑制効果が50%に落ち、6 時間以降であれば効果はほとんどありません。
放射性ヨウ素は呼吸により気管支や肺から、また口から入ったものは消化管から吸収され血液の中に入ります。このように取り込まれた放射性ヨウ素の10 から30%は、24 時間以内に甲状腺に集まり、残りの大部分は尿から排出されます。

Q6)ヨウ素剤は何回飲むの?
A: 飲む回数は1 回とされました。それ以上服用することが必要と予測されるときには避難を優先させるそうです。
注:地震により原発事故が引きおこされたいわゆる原発震災などの場合、道路の崩壊や混乱で避難が出来なくなることも考えられます。しかしこのような場合は原災法では一切考慮されていません。また事故の規模もチェルノブイリ級の事故は日本では起こりえないと決められています!。

Q7)ヨウ素剤はどれくらい飲むの?
A:
ヨウ素剤を飲む量は年齢によって異なります。その量を年齢別に表にまとめます。

年齢 
ヨウ素量
ヨウ化カリウム量
新生児
12.5mg
16.3mg
生後1ヶ月から3歳未満
25mg 
32.5mg
3歳以上13 歳未満
38mg 
50mg
13歳以上40 歳未満
76mg 
100mg
40歳以上は投与しない
  • 新生児から3 歳未満の小児については丸薬を細かく砕いてシロップに溶解して与えます。ヨウ化カリウムは、いったん水に溶かしてしまうと不安定になりますので、水溶液の状態で長く保存することは出来ません。
  • 現在日本に用意されているヨウ素剤は、ヨウ素量38mg、ヨウ化カリウム量50mgを含む丸薬1 種 なので、当面これを使用します。従って
  • 3 歳以上13 歳までは丸薬を1錠 (ヨウ素量38mg)
  • 13 歳以上の場合は丸薬を2錠(ヨウ素量76mg)
    注:ヨウ化カリウムの製剤で30mg以上服用すれば、放射性ヨウ素が甲状腺へ集まるのを93%抑制することができるという実験結果を根拠にしています。
  • 40 歳以上にヨウ素剤を投与しないのは、放射性ヨウ素によって甲状腺がんの発生率が増加しないためと説明しています。ただし線量が5グレイを越えると予測されるときは放射線により甲状腺機能低下が起きるため40歳以上でも服用します。


  


Q8)ヨウ素を含む食品を食べると予防効果があるの?
A:
ヨウ素は海産物特にコンブに多く含まれています。コンブ乾燥重量100gあたりには100から300mgのヨウ素 が含まれています。しかし、コンブを食べることによって短時間に大量のヨウ素を体内に取り入れるのは難しいようです。
各家庭にあるヨウ素を含むうがい薬や外用薬を飲むことについて:
 これは、安全性が確認されていませんし、ヨウ素含有量が少ないため、放射性ヨウ素が甲状腺に集まるのを防ぐ効\ 果は少ないといわれています。
注ー1:コンブについていえば、10x10cm(10g)のコンブでだしをとると、だしの中に約16mgのヨウ素が出てきま す。これを2 杯 めば30mgのヨウ素が体に入ります。問題はコンブの種類によって含まれているヨウ素の量が違うので だしにとれるヨウ素の量も多い少ないがあることです。乳幼児では一度に多くの水を飲めないので、ヨウドカリ剤を少量の水に溶かしてのませる必要があります。

Q9)ヨウ素剤を服用することによる副作用は?
A:
ヨウ素剤を服用したときにおこる副作用は大きく二つに分けられます。
一つは多量のヨウ素が甲状腺機能を抑えて甲状腺機能低下症になることです。
二つ目は逆に甲状腺機能亢進症をおこすことです。これはヨード不足の地域で見られることで、ヨウ素を充分にとっている日本人にはほとんど見られません。
注ー 1:ヨウ素剤服用による副作用は非常に希です。国際原子力機関(IAEA)の資料では、一日あたり300mg(ここで決められた服用量の4 倍から8 倍量)のヨウ素を服用した場合でも100 万人から1000 万人に一人の確率で皮膚のかゆみや紅斑、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などの副作用がでるとしています。死亡する確率は10 億分の1 だそうです。ポーランドで小児1050 万人にヨウ素剤を与えて副作用は報告されていません。
注ー2:本来ヨウ素というものは人間の生命にとって無くてはならない甲状腺ホルモンを作るために必須の元素です。生体にヨウ素に対する拒否反応がある方が生命にとって危険であると考えられます。

Q10)なぜ、小児は放射性ヨウ素によってがんになりやすいの?
A:
小児は成長が盛んなために代謝も盛んです。甲状腺の細胞も盛んに分裂しています。本来放射線による傷害を受けやすいのは盛んに分裂している細胞です。代謝が盛んだということは甲状腺ホルモンの産生も高く、従ってヨウ素を沢山取り込むのです。その結果、放射性ヨウ素も多く取り込んでしまうことになり、放射線によって遺伝子に傷がつき後にがんになる危険性が高まるのです。

Q11)ヨウ素剤を服用させない方がよいと考えられる病気は何?
A:
ヨウ素過敏症(ヨウ素を含む造影剤過敏症、低補体性血管炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、甲状腺機能異常症等です。
  これらの疾患を抱えている人でも1回の服用であれば問題ないと考えられますが、普段からどうすればよいかを医師に相談して考えておきましょう。

Q12)どんな放射能でもヨウ素剤で取り込みを予防できるの?
A:
ヨウ素剤によって体の中に取り込む放射能を少なくできるのは放射性ヨウ素だけです。ほかの放射性物質、放射線に対しては、 ヨウ素剤は全く効果はありませんので、図8に示したようにできるだけ取り込まないように注意するしかありません。

参考のために
 日本ではヨウ素剤は医師の処方箋がないと買うことが出来ないため、行政がヨウ素剤の家庭配布をしないと決めた場合、いざというときに手元にヨウ素剤が無い事がおこりえます。
特に原発立地県に住んでいて、20 歳以下の子供がいる家庭では行政をうごかすなどしてヨウ素剤を手元に置いておく方が安心です。
 行政は一般の人によくヨウ素剤の使い方を説明して、説明書とヨウ素剤を防災用具と一緒に保管してもらい、1 年に1 度の防災訓練の時に確認する等して注意を促せば、事故発生時に見つからないとか、誤って飲むなどの事故は避けることが出来るでしょう。
 ヨウ素剤は、決められた量を1 回服用する場合あまり心配ありませんが、長期間連続服用すると、甲状腺機能亢進症や、甲状腺機能低下症などを引き こすおそれがあります。その場合は直ちに服用を中止すれば元に戻ります。




平成23年3月26





 
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