ぽんた俳倶楽部


                          俳号 鉄馬(てつうま) by 笠原 正敏



              春荒れや野辺の送りの歌のごと
                              (大震災犠牲者に捧げる)

            
              ワルキューレ千鳥ヶ淵の花遊び



              いきつぎに山葵田の水含みけり



                 笑む君の棺に釘打つ冬の川
                「全貌」編集長、原正寿氏を偲んで


                 湯豆腐や遠くにありし砂嵐



      弓張月男の子の深き眠りかな

 

      この星に出で麒麟児子供の日

 

      地球儀を見回すやうに柿を剥く




               冴ゆる夜は万有引力天に満つ


      すうとんと空切り入れし西瓜かな


      前略と書きて筆擱く終戦日


      歓声が白球を飲む子規忌かな


      吊り橋や二月の空を要とす


      山笑ふハーレーダビットソン笑ふ


      辞書に引く量子力学冬の星


      炎天にビンラーディンの立ちいばり


      わが熱をおびて揚羽の蹴り上がる


      闇のせし回送電車冴返る


      ぶきちように山負ふてゐる蟇蛙


      今生とふ寸法ありて曼珠沙華


      弐百十四萬柱開戦日


      あと戻りなき初夏の坂をゆく


      秋分や死後裏返る砂時計


      海描の群れ凍てつく海を吊り上げる


      玉葱の円周率をまつぷたつ


      流れ雲蜻蛉を空に置き去りに


      手袋の心のさまに編みあがる


      去勢せし犬の包帯三鬼の忌


      春の宵ヤプーは椅子になつてゐる


      海原の熱帯びてきし初がつを


      人生の余白はしらず寒昴


      鶴啼きて光年の空煌めきぬ


      木の芽風ナースの白き耳朶を噛む


      おほむねはよしと熱燗腑に落とす


      われの丈光年の丈天の川





                  俳号 鉄馬(てつうま) by 笠原 正敏



                             




 
inserted by FC2 system