笠原正敏アメリカ東海岸滞在記

2007年アメリカへの小さな旅

5月28日より私事を兼ねた10日間の旅でした。初めてで短期間ゆえ深い思索にはなりませんが
ある種のカルチャーショックは感じました。
New York、Boston、Main、東海岸3箇所の旅の中からいくつかあげてみたい思います。
CONTINENTALの機内から感じていたのですがNew Yorkの空港に降り立って見る異常に肥満した人の群れ。
友人に聞けば65%、私にはもっとではと見えました。
70年代に開発され80年代から大量生産された「コーンシロップ」「ラード」「バター」が、
コーラ等の飲料水に、クッキー、ケーキの菓子類に、ピザ、ホットドック、ハンバーガーなどの
ジャンクフードと呼ばれる国民食に大量に使用され、そのテレビコマーシャルはひっきりなしです。
メーカーとPR会社、糖尿に高血圧、心臓、関節や骨の病を治療する製薬会社が
この状態を放置しているのではなどと穿った見方までしてしまいます。
間違いでしょうが。

日本では聞きなれないニューヨークのパトカーのサイレンと人の喧騒は東京の場末に暮らす私には雑音でした。
加齢のせいかも知れません。
紛うことないあらゆる人種の坩堝です。
救われたのはMetropolitan美術館。
洋の東西を問わず古代から近代にわたる厖大な作品が展示されています。
ロンドンの大英博物館に次ぐ収集の規模との事。
全部観るには2日。半日で済ませました。作者の魂に触れる芸術品と対面するのはそれが限度です。
眼の保養になったのですが、大英博物館同様に蒐集した手だてに思いを寄せざるを得ませんでした。
屋上からセントラルパークの向こう側に大きなダコダハウスが見えます。


メトロポリタン美術館屋上よりセントラルパークを挟んで
ダコタハウス

ジョンレノンはそのアパート前で撃たれ亡くなりましたがオノヨウコさんは今も住んでいるそうです。
地下鉄をよく利用しましたが日本のそれと違い大きな揺れと軋む音はうるさいものでした。
そうグランドゼロに行きました。
イスラム原理主義組織アルカイダが民間航空機を乗っ取り国際金融の象徴だったここ2棟の高層ビルと
国防総省ペンタゴン他を自爆攻撃した9.11.
まじまじと観たかった所です。


グラウンゼロ

アルカイダに打ち砕かれたワールドトレードセンターはクレーンが何機も動き、
沢山の作業員が新たな楼閣建設の基礎工事をしていました。
入り口の近くにここで犠牲になった無辜の3千数百人の名前の刻まれた
大きなネームプレートが張り出されあり、黙祷を捧げてきました。


ワールドトレードセンター

その後アフガニスタンでの戦死者は失念しましたがイラクだけでもすでに3千5百人を越え、
合わせると5千人近いアメリカの青年が命を落としているのではないでしょうか。
地球儀を見るとアフガンとイラクが対中、対露、対アラブの地政学上の軍事戦略の要であることが
素人眼にも解ります。
最近聞いた話では今後のイラクの石油の輸出をハリバートンが取り扱うと耳にしました。
CEOはチェイニー副大統領です。
いま行われているアメリカのイスラムへの苛烈な政策は新たな大きなテロリズムを誘発しないかと心配されます。

話しが横道にそれました。
Bostonに北上です。飛行機で1時間あっという間です。
イギリスから1620年9月102人のピューリタン清教徒達を乗せたメイフラワー号が着いたところです。
街全体がレンガ色。目立った色の建物は眼に入りません。
New Yorkとは空気も違います。


ボストン美術館

Bostonの緑濃く落ち着いた街並にアメリカ発祥の古都の面影がありました。
Bostonで大学教授をしている友人は街並を保存することが厳しく義務付けられていると話してくれました。
京都と姉妹都市ですが高い駅ビルや古寺に隣接するマンション建設が許可される京都とは似ても似つかわぬもの。
ボストン美術館も足を運びました。立ち寄りたかった所です。
1876年に開館。世界各地の各分野の古美術が収蔵されていました。
大きな建物で東洋美術の収集は屈指と聞きます。
これには薩長の明治維新政府の廃仏棄釈運動が災いしていました。
当時維持運営に窮した寺が二束三文で手放したものが海を渡りそこに。
東京美術学校、後の東京藝術大学の初代校長の岡倉天心がボストン美術館の東洋部長として
分類管理してくれたことで散逸を免れドライな気候のこの地に眠り続けてくれたことは
幸いだったかも知れません。彼の解説が今も使われています。
「The Ideals of the East」=東洋の理想 「The Book of Tea」=茶の本は、天心の代表作ですが
このボストンの地にて英文で書かれたものです。


雨にけむるボストンセントラル教会


夜、マサチューセッツ州ガバーメントセンターから程近いBostonで一番古い1826年に開店したという
ロブスター屋(UNION OYSTER HOUSE)に行きました。
バターソースにレモンで頂くのですがここに来た目的の1つは達しました。
珍しさと美味しさが入り交ぜになりました。
数件となりのナイキショップでレッドソックスのTシャツを買いました。19ドル。
New Yorkではヤンキースゴジラ松井でしたが、ここは松阪君大人気です。
大相撲の東西横綱がモンゴル人であれば驚くにあたりません。

更に北上します。Canada国境のMainに足を延ばしました。
Bostonから車で5時間。
この日は途中事故渋滞で6時間。
約1時間おき位に小さなタウン。内陸部であれば岩場ガレ場が続くところでしょうが東海岸ですので
広大な原生林と深い入り江が続くばかりです。車のスピードは75マイル(120キロ)法定速度で流れています。
路幅は日本より少し広いでしょうがバス2台分のコンボイトラックがすれ違います。
アメ車特有でシートとサスペンションは軟らかく、硬いのに慣れている私には疲れるしお尻も痛い。
東海岸の一部の移動でこうです。
それだけ広い大陸国家だという事です。
Mainはブッシュ家の別荘もあり、大西洋に面したアメリカの緑豊かな避暑地との事です。
冬場は氷点下20度から30度まで下がる寒い所でもあり、州郡ポートランドから西へ3時間
ワシントン山やホワイト山地といわれる山岳地帯はスキー客で賑わうようです。

友人にアメリカでの注意事項を聞かされました。

酔った姿を見せない、強盗に狙われる。
挨拶は欠かさない、それがコミュニケーション。
チップは欠かさずに、意地悪される。
警官に何か言われたら逃げるな、撃たれる。
眼を見て笑顔で話すこと、不誠実だと思われる。等です。
日頃無愛想な私の作り笑顔は彼の国の人にどう写ったのでしょうか。
もう一つ付け加える事があります。
意識して野菜を食べること、自分の身体の為だ。です。

世界最強軍事国家、世界金融の支配者アメリカに来てささやかですが大事なことを教わりました。
これより5日間逆コースを辿りました。とりとめがありません。
この辺でペンを擱きます。


ハドソン河を挟み後ろにマンハッタンビル群


雲海と戯れている大西洋

子午線を北指す夏の白夜かな

ボストンのバス停前の風青し

英国の軛切る地の若楓

       鉄馬


平成19年6月13日



 
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