平成17年6月3日

「北方領土返還あり得ず」 露外務省が声明文

大統領来日も打開困難
 ロシア外務省は二日、日本の北方領土返還要求には応じることはないとする内容の声明文を発表した。
領土問題で強硬姿勢に転じるロシアに対し、日本国内の世論の不信感と警戒感は深まるものとみられる。
 ロシアの左派愛国系日刊紙「ソビエツカヤ・ロシア」(五月二十四日付)のラブロフ外相に対する公開質問状に答えたもので、
声明はヤコベンコ外務報道官の回答としてロシア外務省のホームページに掲載された。
 声明は領土問題を「日本が国際法に基づき存在する日露両国の国境に異を唱えている問題」と位置付けたうえで、
問題の解決に向けては「ロシア連邦の領土保全を図り、議会の承認を得なければならない」と言明。
そうした状況では、「日本に(ロシアの)領土の一部を引き渡すことは不可能なことくらい十分わかるはずだ」と述べ、
ロシアの対日譲歩はあり得ないと強調した。
 一方、「ソビエツカヤ・ロシア」紙は、ラブロフ外相が昨年十一月、
北方領土問題で歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の両島の返還を規定した
一九五六年の日ソ共同宣言に基づく解決について言及していたことにからみ、
「同宣言は法的に無効だ」との極論を展開。同外相を非難した。
 報道官はこれに対し、日ソ共同宣言の有効性は認めつつも、同宣言が実行されないのは
「日本側が一定の条件を履行していない」ことが原因だとして、日本側に非があるとの見方を示した。
 さらに、ソ連史観に基づく同紙が「日本の国連安保理常任理事国入りはロシアへの
領土要求を取り下げるまで見送るよう国際社会に働きかけるべきだ」とする強硬論を提示したことに対しても、
報道官は「そうした見解の大部分は正しい」と評価し、
領土問題解決に向けたロシア側の意欲が後退していることを印象付けた。
 ラブロフ外相は五月三十一日に訪日し、町村信孝外相と会談、
プーチン大統領の年内訪日実現で一致している。
ただ、プーチン大統領の年内訪日が実現しても、ロシアに対して北方領土問題への
こうした根本姿勢に変化を期待することは困難だとみられる。
譲歩を迫られる日本国内に、対露不信による強硬論が出てくることも予想される。


  

 
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