巧妙な中国政府のネット検閲、米の調査で明らかに

 米国の研究機関が中国政府のインターネット統制について調べたレポートが14日(米国時間)に発表された。それによると、同国政府は様々なレベルで手段を講じ、体制を批判する言説のみを正確にブロックしており、その手法はますます洗練されつつあるという。

 精度が高まったことにより、中国政府のフィルターは、チベット一般に関する内容をそのまま通し、チベット独立関連の内容だけをブロックできるほどの機能を持つようになった。同様に中国政府は http://www.falundafa-jp.net/ 法輪功やダライ・ラマ、天安門事件など、要注意と見なされるトピックに関する議論を効果的に取り締まっているという。今回の調査は、『 http://www.opennetinitiative.net/ オープンネット・イニシアティブ』によって行なわれたもの。

 中国政府の検閲には多数の政府機関と数千人もの公務員や民間企業の従業員が関わっており、その範囲も、長距離にわたってデータを運ぶ基幹ネットワークから、多くの中国国民がインターネットにアクセスするネットカフェまで、あらゆるレベルに及ぶ。

 また、広範にわたる検閲活動により、中国政府によるフィルタリング・ツールはウェブ日記やブログといった新しい形態のメディアにも対応していることが明らかになったと、レポートは記している。

 「技術の急速な変化にもかかわらず、中国は世界のどの国よりもインターネットのフィルタリングで成功を収めている」と、今回発表された調査の中心となった1人でハーバード大学ロースクール『 http://cyber.law.harvard.edu/home/ インターネットと社会のためのバークマン・センター』責任者の、ジョン・ポールフリー氏は語る。

 例えば、サウジアラビアではインターネットを管理するため、すべてのトラフィックを統制機関に集中させ、ここが場合によっては監視を行なうという手段を主に使っている。この場合、禁止されたサイトにアクセスしようとすると、要求はブロックされたというメッセージが表示される、とポールフリー氏は指摘する。

 「それに比べると中国ははるかに巧妙だ」とポールフリー氏。「ブロックされたことすら知らされない。存在は知っているのにアクセスできないとユーザー側にわかってしまう手法に比べると、こちらの方がより効果的だ」

 中国の検閲は、いくつかのサーチエンジンをはじめとする複数の箇所で行なわれており、禁止コンテンツの代わりに警告が表示されるのではなく、コンテンツそのものが削除されるのだと、ポールフリー氏は説明する。

 米グーグル社は、昨年秋から試験運用を開始した http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20040928207.html 中国語のニュース・サービスで、中国政府が禁止するサイトを検索結果から削除していることを認めている(日本語版記事)。同社は、このような措置をとった理由を、ユーザーがたとえリンクをクリックしても中国側のフィルタリングのせいでページにたどり着けないからだとしている。

 またポールフリー氏は、中国でのフィルタリングが効果的なのは、常に変更が行なわれ、ユーザーの不意を突くからでもあると述べる。

 米国に次いで世界第2位のインターネット人口を抱える中国では、政府はビジネスや教育目的のインターネット利用を促す一方で、体制批判やポルノなど、共産党政権が要注意と見なすトピックへのアクセスの遮断に努めている。ただし、 http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20030704205.html 中国のネットユーザーの多くはこうした統制を回避する方法を心得ている(日本語版記事)――例えば、プロキシサーバーを使うことで本当の所在を隠すといったやり方だ。

 今回の調査でも、こうしたプロキシサーバーと長距離電話でのダイヤルアップ接続を使って、国外にいる研究チームは中国内の統制の実態を把握した。研究チームはまた、中国内のボランティアに依頼してさらに大規模なテストも実施した。

 トラフィックの流れを監視し、どこでコンテンツが削除されるかを調べるために、研究チームは「パケット・スニファー」と呼ばれるソフトウェアや機器を使った。ポールフリー氏は調査手法の詳細を明らかにせず、多くのインターネットシステムにはセキュリティー上の問題が存在し、これを利用すれば通信内容を傍受できると指摘するにとどめた。

 大富豪の金融家ジョージ・ソロス氏が設立・運営している人権擁護団体『 http://www.soros.org/ オープン・ソサエティー研究所』から資金援助を受けているオープンネット・イニシアティブでは、ハーバード大学やケンブリッジ大学、トロント大学の研究者が共同で、インターネットでの検閲や監視の問題に取り組んでいる。

 今回の調査では、以下の事実が明らかになった。

一斉送信されるニュースレターが時折ブロックされると不満を述べる反体制活動家もいるが、個々の電子メールはほとんどフィルタリングされていない。

フィルタリングの多くはバックボーンで行なわれるが、個々のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)でもさらにブロックされることがある。ネットカフェや掲示板運営者も、当局からの処罰を恐れて自主的にコンテンツの統制を行なっている。

フィルタリングは、特定のドメイン名やIPアドレスにアクセスしたときよりも、特定のキーワードが出てきたことをきっかけに行なわれることが多い。キーワードベースのフィルタリングにより、禁止されたトピックを含む記事のブログへの掲載も阻止できる。

 「キーワードレベルでのフィルタリングはさらに精度を上げることもできる」と、ポールフリー氏は言う。「中国政府は、国民にインターネットの利用を促し、ひいては経済成長につなげたいと考えている。すべてのブログサーバーを閉鎖するのは政府にとっても賢いやり方とはいえないのだろうが、どんな形であれ体制批判は流したくないのだ」


  


 
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