平成17年/03/29

東アジアの脅威三本柱「中国・北・海上テロ」 防衛研報告書

 防衛庁のシンクタンク「防衛研究所」は二十八日、年次報告書「東アジア戦略概観2005」を公表した。日本周辺の安全保障環境について、台湾海峡有事に備えて軍事力を近代化している中国、核・弾道ミサイル開発を進める北朝鮮、先に日本人が拉致されたマラッカ海峡などでの海上テロを脅威の三本柱として打ち出したのが特徴だ。テロやミサイル攻撃には「自衛隊の対処能力が不十分」とも指摘し、ミサイル防衛(MD)などによる能力向上の必要性を強調した。
 概観は中国の軍事力に関して、「台湾への武力行使と米軍の介入阻止を念頭に置いた攻撃的な訓練が頻繁に行われている」と戦闘力の向上を指摘。人民解放軍の装備・組織の近代化に加え、欧州連合(EU)の対中武器輸出解禁の動向も踏まえ、中台の軍事バランスを「注意深くみていく必要がある」と警戒感を示した。
 また、昨年十一月の中国原子力潜水艦による日本領海侵犯事件にも触れ「中国海軍が沿岸防衛型から近海防衛型に向け、確実に進歩しつつある」と分析。東シナ海でのガス田開発に象徴されるように「胡錦濤政権における対外政策や対台湾政策は、世論やナショナリズムの影響を受けやすくなっている」との見解も提示した。
 北朝鮮については、金正日総書記が体制維持のため、核外交で「米国から安全の保証を、諸外国からは経済援助を得ようとしている」としたうえで、核実験など「交渉の機会を失うような行動は避けてきた」と指摘。北朝鮮は六カ国協議への参加の無期限中断を表明しているが「(協議の)プロセスが長引くほど、核と弾道ミサイルを開発する時間が北朝鮮に与えられる」と安全保障環境への悪影響も強調した。
 さらに、マラッカ海峡などで海賊と国際テロ組織が結託し、石油タンカーを乗っ取って港湾施設を攻撃するといった海上テロを東アジアの「新たな脅威」と例示。テロの防止や海上ルートを使った大量破壊兵器の拡散防止で、日本が主導的な役割を果たすよう提起している。





 
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