05/01/18

植民地被害 韓国政府が個人補償 日韓交渉で確認 外交文書を公開
韓国政府は十七日、日本と韓国の国交が正常化した一九
六五年の日韓基本条約締結の経緯に関して、締結交渉の外交文書を一般公開した。こ
の中で、条約には盛り込まれなかった植民地支配の被害をめぐる個人補償について、
補償義務を日本政府ではなく韓国政府が負うことを確認していた事実が明らかになっ
た。同国内では、当時日本からの補償をすべて経済協力の形で受け取ったことへの根
強い批判があり、今後、同国政府に対する補償要求が強まりそうだ。
 公開された文書は、補償請求権に関する会議録や訓令など五件、約千二百ページ。
今年は条約締結四十周年に当たるが、関連文書公開は初めて。
 六二年に当時の大平正芳外相と金鍾泌(キムジヨンピル)中央情報部長との間で、
日本が無償三億ドル、有償二億ドルの経済協力をすることを確認した「大平・金メ
モ」をめぐっては、韓国外務省が六四年の公文書で「(個人請求権を含め)各請求項
目は一括解決する」とした上で、「(韓国)政府は個人請求権者に補償義務を負うこ
とになる」としている。
 交渉では、六一年五月の時点で日本政府が個人補償を行う姿勢を表明。しかし韓国
政府が「国内問題」としてこれを断った経緯がある。今回、当時韓国側が日本への徴
用者数を死亡者・負傷者合わせて約百三万人と算定したことも明らかになったが、同
国政府はうち死亡者約八千五百人だけに対して、約二十五億七千万ウオン(当時レー
トで約三十七億二千六百五十万円)を支払っている。
 韓国では徴用者らが起こした情報公開請求訴訟で昨年二月、ソウル行政裁判所が今
回の五件の文書公開を命じ、控訴審判決を前に政府側が自主的に公開に踏み切った。
韓国政府は今後、他の外交文書の追加公開も行う方針。


05/01/18

日韓交渉の文書公開
経済協力か請求権の対価か

 17日に韓国政府が一部公開した日韓基本条約などをめぐる外交文書。植民地時代
を清算する日本の提供資金の名目や韓国民の対日請求権消滅をめぐり、ぎりぎりまで
日韓双方がせめぎ合った様子が明らかになった。国益がぶつかり合う一方で、日韓と
も、戦争による被徴用者など請求権保有者への目配りが足りなかったことも際立っ
た。(ソウル支局・篠ケ瀬祐司)
 一九六五年六月に決着した一連の国交正常化交渉で、最大の焦点となった日本から
韓国への資金提供の名目は、「経済協力」か、それとも「請求権問題を解決するた
め」の資金か。
 同年四−五月の交渉過程で日本側は、国交正常化後に韓国民の被徴用者や家族に、
個別に補償を請求される可能性を消しておくため、この提供資金をもって韓国側への
補償は完了するとの立場を主張。韓国がそれまで主張していた対日請求に対し、調印
後は「いかなる主張もできない」との了解を公文として残そうと試みている。
 日本側は、請求権が存在することの根拠が明確でないなどとして、提供資金は、請
求権の対価ではない「経済協力の側面が強い」と強調した。
 これに対し、国民の請求権を“代行”して交渉に臨む韓国側は、日本から受ける資
金が請求権に無関係となれば「国民感情に重大な問題が生じる」(代表団)。請求権
消滅の公文化も韓国国内の不満をあおるのは間違いない。韓国側は提供資金について
「表現は請求権および経済協力としなければならない」とし、請求権の対価という側
面にこだわった。
 同年六月十九日、韓国側代表団が本国に送った暗号文には「(請求権解決を定めた
第)二条がいまだに妥結できない。事態打開に向け至急訓令を願う」と焦りがにじ
む。
 名目に固執した双方代表団が結局、「請求権問題の完全、最終的な解決を確認」と
の条文で折り合ったのは同月二十一日。基本条約や請求権・経済協力協定の調印前日
だった。
 公開文書で明らかになったこれらのやりとりからは、元軍人や軍属、労働者ら被徴
用者への気遣いは感じられない。韓国民の請求権消滅に躍起になった日本側はもとよ
り、韓国側代表団も、日本から資金が入れば「五カ年計画の追加資金として反映す
る」と、経済発展優先の姿勢を交渉の席で明言している。
 被害者不在の交渉経緯について、韓国内では早くも「国交正常化四十周年という
が、こうした経緯で結ばれた条約を祝う気になれない」との声も聞かれる。
 ソウル市立大学の鄭在貞(チョン・ジェジョン)教授は、補償対象から外れた人
や、当時問題視されていなかった元従軍慰安婦ら「恨みを残している人たちのため
に、両政府が共同で財団をつくるなどしてはどうか」と、日韓の取り組みの必要性を
指摘している。
◇対日請求権をめぐる交渉の経緯
【1952年】
  2月20日 韓国側が、戦争による被徴用者の被害補償(3億6400万ドル)
などの対日請求を提示
【60年】
  請求権について本格論議入り
【62年】
  3月12〜17日 請求権に対する提供額として、日本側が7000万ドル+借
款2億ドル、韓国側が7億ドルを非公式提示
  11月12日 大平正芳外相、金鍾泌・韓国中央情報部長の間で日本の支払額を
「無償3億ドル、有償2億ドル」などとするメモを手交
【65年】
  4月3日 椎名悦三郎、李東元の両外相間で「請求権問題の解決および経済協力
に関する合意事項」を確認
  6月19日 韓国側代表団が本国に対し、請求権解決を定めた「2条がいまだ妥
結できず」と至急暗号文を送信
  21日 「解決した請求権には韓国の8項目の請求はすべて含まれ、対日請求権
は主張できなくなる」ことを日韓間で確認、韓国代表団が本国に承認を求める
  22日 日韓基本条約、請求権・経済協力協定などに調印(ソウル支局)


05/01/18

日韓基本条約の交渉文書、韓国が公開 補償で両国激論

 韓国外交通商省は17日、65年6月の日韓基本条約締結までの両国間の交渉文書
の一部を初めて公開した。「無償3億ドル、有償2億ドル」の対韓経済協力で合意し
た当時の大平正芳外相と金鍾泌(キム・ジョンピル)中央情報部長による「金・大平
メモ」(62年11月)による政治決着後も、対日請求権の解釈をめぐって日韓が締
結直前まで激しく意見をぶつけ合った様子が浮き彫りになった。
 公開されたのは、同省が保管する日韓会談(51〜65年)関連文書161件のう
ち、63年から条約締結までの韓国政府の公文や日韓の会議録などをまとめた5件、
計約1200ページ。
 65年3月22日付の「請求権問題に関する韓国側の立場」と題する文書で、韓国
側は同メモを「韓国が日本に持つ一般請求権を解決するための大綱」だと規定。その
結果として「請求権問題が完全かつ最終的に合意された」とし、経済協力は請求権放
棄の代償と見なした。
 日本政府による同日の「日本側の立場」は、「韓国の経済の開発、発展に寄与する
ことを希望して無償、有償の経済協力を供与する」と記述。請求権消滅と経済協力を
切り離す立場を示し、見解の差は明白だった。
 一方、植民地支配に伴う韓国人の個人請求権について韓国側は、韓国政府が個人補
償を全面的に引き受ける方針で交渉に臨んでいたことが文書で裏付けられた。当時の
韓国外務省が64年5月11日に経済企画院長官にあてた書簡の中に「請求権問題解
決の際は個人請求権を含めて解決することになるため、政府は個人請求権の保有者に
補償する義務があると思われる」と記されていた。
 半面、日本側は個人補償問題が再燃する事態を懸念。個人請求権の中身や範囲につ
いて韓国側に詳細に説明を求めた。65年4月20日の「請求権及び経済協力委員
会」第1次会議で韓国側は「すべての請求権は解決されたと解釈でき、今後、両国が
国内でどう処理するかだけ」と述べ、日本の経済協力獲得を急いでいた当時の朴正熙
(パク・チョンヒ)政権の交渉姿勢を裏付けた。
 〈キーワード・日韓会談〉 日本による朝鮮半島の植民地支配終了後に始まった韓
国との国交正常化交渉。51年の予備会談に続いて52年から本会談が始まった。対
立と中断を繰り返しながら65年まで7次にわたって続いた。争点だった日本に対す
る韓国の請求権問題は62年、日本が韓国に対し経済協力として「無償3億ドル、有
償2億ドル、民間協力資金1億ドル以上」を供与することで事実上決着した。
 65年6月、日韓基本条約と(1)請求権及び経済協力(2)漁業(3)在日韓国
人の法的地位(4)文化財と文化協力、の4協定が調印され、まとめて日韓条約と呼
ばれる。日本からは最終的に無償3億ドル、有償2億ドル、民間協力資金3億ドルが
提供された。日韓会談の文書は、01年に施行された情報公開法によって日本外務省
も公開しているが、議事録の具体的な意見交換の部分などは伏せられており、事実上
の「非公開」状態となっている。


05/01/18

植民地支配の個人補償 「韓国政府が義務負う」 日韓条約の文書公開

 韓国政府は十七日、一九六五年の日韓基本条約締結交渉
に関する外交文書の一部を一般公開した。この中で、韓国政府が協定締結により個人
の対日請求権が消滅することを確認、個人補償に関し、「(韓国)政府が個人請求権
保持者への補償義務を負う」と明確にしていたことが分かった。韓国の被害者団体は
同日、「日韓両国が個人の権利を剥奪(はくだつ)した」などとして、両国政府を相
手に訴訟を起こす考えを表明、韓国政府は対策チームの設置を決めた。
 今回公開されたのは日韓国交正常化交渉第六、七回会談のうち請求権に関する会議
録、訓令など約千二百ページ。徴用被害者らが昨年二月に起こした情報公開訴訟でソ
ウル行政裁判所が一部公開を命じる判決を下したのを受け公開に踏みきった。
 対日個人請求権に関しては、日本が無償三億ドルと有償二億ドルの経済支援を行う
ことで、請求権問題を決着させた六二年の金鍾泌・中央情報部長と大平正芳外相の会
談で、「(条約で)請求権問題が決着すれば(韓国)政府は個人請求権保有者に補償
義務を負うことになった」(六四年五月十一日付、韓国外務省が経済企画院の質問に
答えた文書)と確認していた。
 また、日韓の請求権問題解決が北朝鮮地域に及ぶかどうかについては、「協定文に
明文化せず、両政府が適切な説明で自国民を納得させる」(六四年三月十一日韓国外
務省文書)と、明確化を避けていた。当時、朝鮮半島唯一の合法政府を任じる韓国
と、北朝鮮との国交正常化交渉を視野に入れていた日本とでは立場が対立したが、韓
国は玉虫色で締結を急いだ。
 文書では、韓国側が当初、日本に徴用された人数を生存者、負傷者、死亡者計百三
万人と算定、賠償金三億六千四百万ドルを要求していたことも判明。韓国政府は経済
協力資金獲得を優先、条約締結後に死亡者遺族八千五百五十二人のみに一人当たり三
十万ウォンの補償を行ったが、他の個人補償は行わなかった。
 文書公開を受け同日、韓国の「太平洋戦争犠牲者遺族会」は日本政府に損害賠償請
求訴訟を、韓国政府には未払い賃金請求訴訟、補償請求訴訟などを起こす方針を明ら
かにした。



 
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