平成16年11月7日

小池北方担当相 空と陸から北方領土を視察

藤原弘・根室市長(中央)から四島の説明を受ける小池百合子沖縄・北方担当相
根室市の納沙布岬で7日午後2時
 
 小池百合子沖縄・北方担当相(環境相)が7日、空と陸から北方領土を視察した。
根室市で開いた元島民や返還運動関係者との懇談会では、「来年は日露通好条約150年の大きな節目の年。
領土交渉の実質的な進展に力を入れたい」と述べ、
政府として交渉に最大限努力する姿勢を強調した。
 その後の記者会見で、小池担当相は自由訪問の参加対象が
元島民の2世までしか認められていない問題に触れ、
「(元島民の)高齢化が進んでいることから、(参加対象を)拡大したい。
(ロシア側と交渉に当たる外務省を)しっかり後押ししたい」と答えた。
また、「若い世代に(領土問題の)重要性、本質を知ってもらえるよう、
私だからできることをやっていきたい」と述べたが、具体案は示さなかった。




平成16年/10/24

アジア解放の側面持つ戦争認識描く
「南十字星」は日本人必見のドラマ

作家・深田祐介 

 劇団四季はミュージカル「南十字星」の公演を開始したが、これは演劇史上のみな
らず、日本現代史において画期的な事件といってよいのではないか。
 この演劇は学徒動員され、インドネシアに進駐、インドネシア女性との恋愛燃えさ
かるなかで、BC級戦犯として処刑されてしまう日本人青年の哀話だが、観劇した私
は主人公の悲運に涙しつつ、しかしこのミュージカルの上演自体が戦後日本にとり、
まさに見逃すことのできないことといたく感動した。
 第一にこのドラマは大東亜戦争を戦う日本が昭和十八年以降、戦争目的を明確に打
ち出した点を取り上げている。昭和十八年十一月、アジアで独立した諸国の首脳を東
京に招き、「大東亜を米英の桎梏(しっこく)より解放してその自存自衛を全うす
る」という大東亜共同宣言を発表、外相・重光葵は「日本の戦争目的はアジア解放に
あり、この目的達成をもって日本は完全に満足する」と述べるのである。
 この辺の事情は、一高、東京帝大卒の連絡将校陸軍中尉・荒井渓吉氏の手記にも明
らかだ。荒井氏はインド独立の志士、チャンドラ・ボースが台湾で航空事故死する前
夜、ボースの遺言ともいうべき最後の言葉を聞いた人物である。
 ボースは最後の夜、「日本ノ今次第二次大戦ノ行為ハ考ヘヨウニヨツテハ昔ノ十字
軍同様」であり、「スナハチ日本ガ占領シタ、全東南アジア全民族ノ解放運動ダトイ
フコトニナル」と、日本国民はアジア諸国の自覚を促したとしたうえで、「救世主デ
アルトサヘ激賞シテヲラレタ」。今次戦争には負けたが、数百年にわたって眠ってい
た民族を自覚させ、独立できると教える警鐘であった、とボースは熱弁を振るった。

 翌朝、満州経由でソ連へ脱出、対英抗争を継続しようとしたボースだったが、離陸
直後に搭乗した陸軍機が墜落した。脱出したボースは「生き不動」のごとき火だるま
になり、仁王立ちになって数時間後に死亡する。
 欧米のアジア搾取は酷烈を極めた。「南十字星」はその好例をインドネシアを舞台
に取りあげる。オランダは一八三〇年悪名高き強制栽培法を実施し、ゴム、コー
ヒー、砂糖など欧州で売れる商品の栽培しか事実上許さなかった。ために三毛作可能
の肥沃な農地に恵まれたインドネシアでは餓死者が頻出するのだ。
 その間、オランダは歳入の五割に達する莫大(ばくだい)な利益を得て、産業革命
と鉄道近代化に成功するのである。
 このドラマの評価すべき第二点は、戦乱の悲劇とインドネシアの音楽文化を巧みに
結びつけ、波乱と感動に富んだ音楽劇を浅利慶太氏が創りあげたことだ。
 そもそもインドネシアは大変な文化大国で、民族舞踊、民族衣装ともに百数十種類
を超えるといわれ、スマトラやバリの男声コーラスのすばらしさなどは圧巻である。

 この背景なしには「インドネシア・ラヤ」や、主題歌の「ブンガワン・ソロ」も生
まれてこなかったに違いない。
 こうした背景のもとに創られた「南十字星」は戦後の日本人に欠落しているアジア
解放の側面を持つ戦争の再認識を促し、同時に知られざる音楽文化、アジアの誇るべ
き音楽文化を日本に広く紹介した点において、浅利氏と劇団四季の努力は特筆もので
あろう。
 第三点はBC級戦犯の受難という形ででっちあげによる過酷な戦後のオランダの復
〈を取り上げた点だ。
 牛蒡(ごぼう)を支給したのを木の根を食べさせたと非難される個所は涙なしに見
られない。
 まさに彼らは金庫の植民地の喪失という「金」の恨みを買った犠牲者だったのだ。

 大東亜会議にも出席し、戦後も首相として活躍したミャンマーのバー・モウ首相は
戦後自伝「ビルマの夜明け」のなかで「歴史的に見るならば、日本ほどアジアを白人
支配から離脱させることに貢献した国はない。しかしまたその解放を助けてやった諸
国民そのものから日本ほど誤解を受けている国はない」と述べる。
 私は拙著「大東亜会議の真実」において、このあとに「誤解している諸国民のなか
に『日本国民』も含まれているところに戦後日本の悲劇がある」と付け加えた。
 直後に故福田恆存氏からお便りをいただき、「きみの著作は最後の一行で光彩を
放った」と過分のお言葉を頂戴した。
 強調する。「南十字星」は全日本人必見のドラマである。これは日本人の「誤解」
を解くのに大きく貢献している。






 
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